すごもりシネマ

お家(時々、映画館)で観てきた映画の個人的な感想

No.002『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』★ネタバレ有

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(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

動物を扱ったハートフルな物語を描いた映画はたくさんあり、実際にあったペットの話しが映画化されたものもあります。

しかし、今回考察する映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』は、実話に基づいたストーリーであることに加えた驚きがあるのです。

それは出演している猫が本物のボブ自身であるというところで、作中のボブの自然な動きと表情が見どころでもあります。

  • 公開年:2016年
  • 制作国:イギリス
  • 配給会社:コムストック・グループ
  • 監督:ロジャー・スポティスウッド
  • 原作:ジェームズ・ボーウェン
  • 主演:ルーク・トレッダウェイ
  • キャスト: トレッダウェイルタ・ゲドミンタス、ジョアンヌ・フロガット、アンソニー・ヘッド、キャロライン・グッドール、ベス・ゴダード


『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』予告編

『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』は、2016年のイギリスの伝記映画。

ミュージシャンを夢見ていたものの社会からのドロップアウトを繰り返していた若者ジェームズが、「ボブ」と名付けられた野良猫との出会いをきっかけに、家族・友人との関係を通して新たな生き方を探し出していく。

監督 ロジャー・スポティスウッド 出演者 ルーク・トレッダウェイ、ルタ・ゲドミンタス、ジョアンヌ・フロガット 2017年の英国ナショナルフィルムアワードにて最優秀英国映画賞を受賞した。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ボブという名の猫_幸せのハイタッチ

これより先にはネタバレ内容が含まれますので、ご覧になりたくない方はお気をつけください。 

 

 

なぜ、ボブがジェームズの目の前に現れたか?

ボブは偶然部屋に迷いこんだ猫でしたが、食べ物を与えたり傷を治療してくれたことでジェームスにすっかり懐いてしまったのでしょう。

しかし、この偶然迷い込んだ猫がジェームスにとってかけがえのない存在になっていくのには、“茶トラ”特有の特徴があるのです。

茶トラ猫の特徴

それは治療も済んで元居た場所に猫を戻しても着いて来たり、懐いたら離れない甘えん坊な性格をもつのが茶トラ猫だからです。

茶トラは意志が強い。うちのは死ぬまで私のそばにいた…。 人間以上の親友になってくれる間違いないわ。

茶トラは別名「ストーカー猫」とも呼ばれるくらいに、飼い主のあとについて回る猫で、抱き上げられるのも嫌いじゃない人懐こさがあります。

ですから、ボブがジェームスの路上ライブについていくのも必然といえるのです。

幸せのハイタッチ

茶トラ猫は好奇心が旺盛で遊び好きです。

猫はもともと記憶力がよいのでやって“楽しい”と、思ったことは反射的にする動物です。 猫も飼い主と気持ちを通じ合わせることができます。

お互いに「楽しい!」と思った瞬間がハイタッチにつながったのでしょう。

運命の出会いだった

ともあれジェームスにとってこの茶トラのボブが迷い込んできたのは、“幸運”だとしかいいようがありません。

キジトラでも三毛でもなく茶トラであったことが、ジェームスの運命を左右したといってもよいでしょう。

ジェームスの人生をサポートするために現れた猫だと誰もが思うはずです。

なぜ、ジェームスは薬を断つことができたのか?

ジェームスが“メタドンプログラム”の終了を決意し完全に薬を断つことができたのには、ボブの存在や善い人達との出会いも大きかったでしょう。 それにジェームスには身近で薬物依存で孤独なまま命を落とす人がいたり、そのことで傷つき苦しむ家族がいることも知ったからです。

ボブを守るために…

ボブと生活を始めたことでジェームスは精神的に助けられ、ジェームスにとって守りたい存在になったことは大きいでしょう。

犬に脅かされたボブが数日の間行方不明になると、ジェームスは情緒不安定になります。そのくらいにボブが大切な存在となっていました。

ジェームスは外に薬の売人がいることは知っていて近づきますが、ボブが戻ってくると信じ薬の誘惑から勝つことができたのです。 そして、家に帰るとボブが戻っておりジェームスはそのことで、ついに“断薬”できると確信できたのでした。

自らが深く望むこと

隣人のベティの兄が薬物依存で亡くなっていたことと、そのことで彼女自身も情緒不安定になっていると知りました。

薬と手を切るためにものすごく努力をしていた。それでも心の底から望めずにいたんだと思う。 “私のため”でも無理だった…。
引用:ボブという名の猫/配給:Sony Pictures Releasing

ジェームスはベティに断薬することを報告します。ベティは断薬するには誰かの協力なしでは達成が難しい事も知っているので協力したのでした。

ベティにとっても兄の呪縛から抜け出すために、ジェームスの断薬が成功するかしないかが人生の岐路になったのです。

2度も父親に会いに行った理由

一度目の訪問

街でばったり父親にあったジェームスは“メタドンプログラム”を再開し、まだ間もなかったので里心が目覚め父親に甘えたくなったのです。

父親は新しい家庭を築き自分は見捨てられた立場でしたから、他の家族にも配慮しなければいけないところ自分の感情を優先してしまいます。

ベティのアドバイスよりも父親に会って、少しでも変わった自分を知ってほしく我慢ができなかったのでした。

断薬後の訪問

子供だったジェームスは父親との別れの時に横柄な態度をしてしまったのでしょう。そのことで見捨てられたとずっと思っていました。

ジェームスは薬物から立ち直った姿をどうしても父親に見せたかったのです。それが迷惑をかけた償いと思っていたからです。 ジェームスのこの訪問は父親の誤解も解き、父親の愛も取り戻すことができました。

原作『ボブという名のストリート・キャット』

ボブという名のストリート・キャット

作中でもこのボブとジェームスとの生活する様子が話題になり、新聞やSNSで多く取り上げられ出版社の目に留まるシーンがありました。

それが2012年3月にイギリスで出版された原作の『ボブという名のストリートキャット』です。 出版後はザ・サンデー・タイムズ紙に掲載される“ベストセラー・リスト”に76週間連続でランクインしました。

また、アメリカをはじめ中国語、日本語でも翻訳され30か国以上の国で出版され世界中で500万部を売りあげました。

原作者ジェームズ・ボーエンとボブの今

2017年以降のジェームス氏は本などの収益はほぼ動物愛護とホームレスなどの支援に使い、普通の家をローンを組んで購入し暮らしています。

ボブと一緒にチャリティ・イベントで講演などに出かけ、ホームレスや動物虐待の現状を訴えたり、寄付をするなどの活動をしていました。

ボブは今どうしているのか?

2020年6月15日残念なことにボブは自宅近くの路上で事故に合い、死亡してしまいました。推定年齢は14歳くらいということです。

ジェームスはボブの死を受け、インタビューでボブとの10年間の生活をこう振り返りました。 「これまでの10年ちょっとのあいだ、ボブは僕にとって師でありつづけてくれた。」

「猫には9つの命がある」

「猫に九生あり」「猫には9つの命がある」ということわざがあり、「なかなか死なない」「しぶとい」といった意味で使われます。

しかし、他の捉え方として一生のうちに9回のピンチをかわせる「幸運な猫」というのもあるのです。 すなわちボブは幸運の持ち主であり、ジェームス・ボーエンのピンチをいくつも救ってきたといえるでしょう。

【まとめ】幸運は身近に存在すると教えてくれる作品

この映画のラストはジェームスの本が出版された記念講演があり、その中で友人からの助言を交えこんなことを言います。

「誰にでもセカンドチャンスは訪れる。」と、でもそれを逃してしまう人が多い。 僕は幸運なことに支えてくれる存在に恵まれていた。

結果的にジェームスはボブの存在があったから、身近の支えてくれる人に協力を求めることができました。

つまり、どうしても守りたいものさえあれば、その目の前のチャンスをつかみに行こうと思えるのです。

もし道をはずれそうになったら「守りたい」という気持ちを思い出せば、巡って自分が守られるということをこの作品は教えてくれました。